はじめに
イギリス王室など、ロイヤルファミリーの保有資産が話題となっています。英王室はクーツ銀行に資産を預けていますが、こうした主に高額所得者や富裕層の資産管理・運用のサービスはプライベートバンキングと呼ばれます。王族や貴族向けのサービスとして、スイスや隣国のリヒテンシュタインなどのヨーロッパ諸国で始まりましたが、日本でも団塊の世代が一斉に退職期を迎えた2005年(平成17)以降、東京に支店を置く銀行が増えています。
今回は10月に日本で拠点を開設し、11月から本格的にプライベートバンクサービスの提供を始めた「LGT銀行」について調べてみました。
LGT銀行の業務、プライベートバンキングとは
ヨーロッパで始まったプライベートバンキングは、古くは銀行などの金融機関が、王族・貴族を対象として、資産運用や節税、相続相談などの総合的な金融関連業務を提供するサービスを意味していました。そのため現在でもヨーロッパでは、イギリス王室の資産を預かるクーツ銀行をはじめとして、オランダ王室の資産を預かるMeesPierson銀行、リヒテンシュタイン公国の公室の資産を預かるLGT銀行など、王侯貴族の資産を預かるプライベートバンクが存在しています。
近年は大手商業銀行などの富裕層向けの資産形成・運用のサービスも含まれ、日本でもプライベートバンキングが行われています。
日本でも広がるプライベートバンキング
日本でもプライベートバンキングは本格化しています。スイスなどヨーロッパでは財務コンサルタント的な色彩が強く、米国では資産運用型が中心となっていますが、日本でもメガバンクが資産数千万円以上の資産家層を中心に力を入れています。
日本では業態ごとの業務規制が厳しく、最近までほとんどないサービスでしたが、2000年代に入り日本版金融ビッグバン以降の金融サービス商品の多様化の中、業務規制の緩和等を背景に国内外の銀行がプライベートバンキングを繰り広げるようになり、LGT銀行も日本に進出しています。
今年10月、日本拠点として「LGTウェルスマネジメント信託」を開業。11月、富裕層向け資産運用サービスを始めたと発表した。LGTウェルスマネジメント信託の永倉義孝会長は記者会見で「石炭や児童労働に関わる投資先を排除するなどESG投資を重視する」と述べています。
LGT銀行とは
LGT銀行は1921年設立。リヒテンシュタイン公爵家資産管理から発展したプライベートバンクで、本店所在地はリヒテンシュタイン公国です。リヒテンシュタイン公爵家がその資産の多くを預ける最大の顧客であると同時に、80年以上前からオーナーを務めています。リヒテンシュタイン公爵家のファミリーオフィスとして、長年にわたって富裕層の資産を運用・管理してきた経験を有しているのが強みです。
設立時は小規模な地方銀行でしたが、世界20カ所以上の拠点に約4千人の従業員を擁する国際的なプライベートバンクへと成長しています。
LGT銀行本店のあるリヒテンシュタイン公国とは
LGT銀行の本店が置かれるリヒテンシュタイン公国は、世界で唯一、君主の家名を冠する国家です。面積は160平方キロメートルで、日本の小豆島にほぼ相当します。 人口は約3.8万人(2016年)で、首都はファドーツ。1719年に現在の国土に当たる領地の自治権が神聖ローマ皇帝カール6世によって承認され、帝国に属する領邦国家としてリヒテンシュタイン公国が成立しました。1806年の神聖ローマ帝国崩壊により、同年にナポレオンが結成するライン同盟に参加、独立国として承認されます。1815年以降はドイツ連邦に加盟し、1866年の同連邦の解体を受け、再び独立国となりました。
LGT銀行のオーナー、リヒテンシュタイン公爵家って
LGT銀行のオーナー家、リヒテンシュタインの家名は、12世紀に始祖フーゴが築城したリヒテンシュタイン城にちなんで名乗ったという伝承が残っています。それだけ歴史のある家系だということです。
代々の当主はハプスブルク家に仕え、1608年に世襲制の「Furst」(公爵または侯爵)の位を授与され、公爵家となりました。活躍して与えられた領地の経営を成功させ、豊富な財源を得て、さらに領地を購入するなどして支配地を広げていきました。
第二次世界大戦に際して領地を失い財政難に陥りましたが、戦前から開始していた銀行業務に力を入れるなどして、再び豊かさを取り戻しています。
企業家としても高名なLGT銀行のオーナー、リヒテンシュタイン公爵家
LGT銀行のオーナー、リヒテンシュタイン公爵家は、企業家として何世紀にもわたって価値を創出してきました。一貫した分散化戦略によって、度重なる危機を乗り越え一族の富を増やしています。世界で最も重要なコレクションの一つである美術コレクションも、分散化戦略の一環とされています。
また、代々農業や林業を手掛けるリヒテンシュタイン家は、継続的に生産方式の近代化を図り、時代のニーズに応える事業ポートフォリオを構築しています。最近は農業に加え、事業会社として金融グループのLGT、高品質なコンテナ苗木の生産会社LIECO、ハイブリッド米の種子を生産する米国最大の企業RiceTecなども手掛けています。
LGT銀行オーナー、リヒテンシュタイン公爵家の美術コレクション
リヒテンシュタインはオーストリアとスイスにはさまれた小国ながら、公爵家は皇帝に貸し付けるほどの財力を誇り、その富を背景とした収集により、美術作品のコレクションが形成されていきました。400年にわたりコレクションを構築し続けており、世界屈指の規模を誇る美術品の個人コレクションを有しています。その華麗さは「ヨーロッパの宝石箱」と称えられるほどです。
LGT銀行のオーナーであるリヒテンシュタイン公爵家による美術コレクションは王家・貴族による芸術庇護というバロック時代の理想に根差しており、今日まで収集方針に従って所蔵品を追加しています。
LGT銀行はカーリング競技のスポンサーも!
カーリングは、世界で最も古いチームスポーツのひとつ。カナダ、スコットランド、スカンジナビア諸国、スイスで人気がありますし、日本でも注目されているスポーツです。今年2022年に中国・北京で開催された冬季オリンピック最終日、女子カーリング決勝で日本代表が活躍した姿に胸を打たれた人も多いことのではないでしょうか。
LGT銀行はこのカーリングのスポンサーを行なっています。昨年2021年は女子世界大会のメインスポンサーでした。テレビ中継ではLGT銀行のロゴが大きく映し出されていました。
LGT銀行のサステナビリティ
リヒテンシュタイン公爵家は、経営能力のある企業家として、また美術の愛好家として有名ですが、同時に社会貢献の分野でも有名です。
リヒテンシュタイン公爵家は、富を得ること自体が目的ではなく、社会的、文化的な付加価値を創出するための手段でもあると考えています。そのためLGT銀行は、すべての拠点で持続可能性を追求し、社会に貢献することは成功を収めた企業として当然の義務であると認識して企業活動を行っています。
まとめ
LGT銀行は、リヒテンシュタイン公爵家の資産管理から発展したプライベートバンクで、本店所在地はリヒテンシュタイン公国です。リヒテンシュタイン公爵家がその資産の多くを預ける最大の顧客であると同時に、80年以上前からオーナーを務めています。
リヒテンシュタイン公国はオーストリアとスイスにはさまれた小国ながら、公爵家は皇帝に貸し付けるほどの財力を持っていました。その富を背景として美術作品のコレクションを400年にわたり構築し続けており、その収集品の華麗さは「ヨーロッパの宝石箱」と称されています。
企業概要
社名:LGT銀行(LGTリヒテンシュタイン銀行= Liechtenstein Global Trust)
会長:フィリップ・フォン・ウント・ツー・リヒテンシュタイン公子
CEO:マクシミリアン・フォン・ウント・ツー・リヒテンシュタイン公子
所在地:Herrengasse, 12 FL-9490 Vaduz, Liechtenstein
拠点所在国:オーストリア、フランス、ドイツ、スイス、英国、米国、オーストラリア、中国、香港、シンガポール、日本など
コーポレートサイト:
持続可能性を追求する金融機関 | LGTにおけるサステナビリティ
主要業務:プライベートバンキングサービス、国際アセットマネジメントサービス